11.11.03
今月の特集 Austin City Limits Music Festival 報告対談 後半
出席者:増子 仁、磯崎奈穂子
司会進行:赤尾美香

 去る9月19日から21日の3日間に渡り、テキサス州はオースティンで開催された『Austin City Limits Music Festival』(以下ACLMF)。昨年、第1回開催に参加しすっかりこのフェスの虜になった赤尾の強引な誘惑に抗えず、今回初参加を決めた増子&磯崎両氏。今回は最終日のレポートです。今回は果たしてどんな話が飛び出すでしょーか!??

タイ
トル、アーティスト名、ジャケット写真をクリックすると、CDの購入画面に行くことができます。
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ビーバー・ネルソン赤尾:いよいよ最終日です。私はビーバー・ネルソンを観に行って、おふた方はジョン・エディでしたよね。
ジョン・エディ増子:80年代から活動してる人で、ニュージャージー出身ということもあり、一時は<次のスプリングスティーン>みたいに言われたんですよ。今回、村上太一氏から「絶対観て来い!」の命を受けておりまして。
赤尾:で、どうだったんですか?
増子:これがねぇ、素晴らしいっ!!
赤尾:何が?
増子:もうねぇ、短絡的に言うと、オヤジ・ロックの最高峰!
赤尾:(本当に短絡的だなぁ、と思うが口にはせず)最高峰まで行っちゃうんだ!
増子:バックがすごくてさ、これは一緒に観てた五十嵐さん(註:音楽評論家の五十嵐正氏)とも驚いてたんだけど、ベースのおっさんはディランのバックで日本にも来たことあるような人で、名前思い出せないんだけどさ(註:五十嵐氏に確認したところ、ロブ・ストーナーと即答。さすがです)。演奏はホントにうまかったですよ。今またニュー・アルバム(註:現在はLost Highway所属)の曲がAAA局なんかでかかってたりするんだけど、いわゆる昔の名前で出ています風なのね。それは本人も分かってるんだけど、MCとかにしても後ろ向きではないんだよ。前に日本に来たスティーヴン・ビショップを観たことがあって、これは後ろ向きでひどかったのね。カラオケ流してギター弾くんだけど…。
磯崎:チューニング、はずれちゃってましたね。
増子:はぁ…ってガッカリしたんですよ。でも、ジョン・エディはすごくポジティヴで演奏も楽しんでる。観てるお客に若い人なんかいないのよ。でも、観てるおじさん達はみんなジョン・エディが好きっていうのが分かるんだよね。
磯崎:そこらのバーで観る、ナチュラルだけど本格的であったかいコンサートって感じですかね。単純に楽しめましたよ。
増子:いにしえのアーティストって、往々にして、…あるじゃない? 
赤尾:痛々しい感、がね。
増子:そう、それ。痛々しい感が、ないんだよ。
ケイリトン・キャリー赤尾ケイトリン・キャリーは観ました?
増子&磯崎:観てない。
赤尾:あらら。かのライアン・アダムスとウィスキータウンをやっていたケイトリン嬢、見た目は太っちょの気のよさげな姉さんだけど、フィドルを弾きながら、いい歌うたいますよぉ。で、何を観てたんですか?
ボブ・シュナイダー増子ボブ・シュナイダーが隣りのステージで演ってたから少し気にしつつ。というのも、ジョン・エディがMCでボブのテキサス人気をちょっと皮肉ってたりもしてて、実際すごい観客の数だったんでね。それを眺めつつ昼ご飯食べたり。
kings
ルシンダ(・ウィリアムス
jack jphnson
磯崎キングス・オブ・レオンのサイン会を覗きに行ったりしながら…。
増子ルシンダ(・ウィリアムス)に臨んだわけですよ。
磯崎:今、気づいたんだけど(とやにわにパンフレットを開いて)、このドノヴァン・フランケンなんとかバンドって、出てたんだね! ジャック・ジョンソンの来日公演で前座やってた人達。
増子&赤尾:あっ、ホントだぁ!(気づくの遅過ぎ)
磯崎:ずーっと一緒に廻ってるんですね。私はこのドイル・ブラムホールも観たかったなぁ。お父さんですよねぇ(註:息子はドイル・ブラムホール・。昨年のACLMFではジュニアがかつて在籍、チャーリー・セクストンがギターを弾いてたアーク・エンジェルスが1日限りの再結成で大トリを務めた。地元なだけに、大人気でした)。
赤尾:ルシンダはどうでしたか? ニューヨーク・ドールズのTシャツ着てて、カッコいいったら、ねぇ?
増子:初めて彼女観たけど…、小柄じゃないですか? 決して若くもないじゃないですか? でもね、あの堂に入ったステージは「どうだ?」って感じですよ(註:オヤジ・ギャグ注意報発令中)。「どうだ、どうだ、私がルシンダ・ウィリアムスだ、他には何もいらないんだ」っていう凄みがあるよね。
赤尾:途中で歌詞忘れちゃって、自分で自分に八つ当たりしてたじゃないですか。ああいうのは、どうなんですか?
増子:いいんじゃないですかぁ(目がハート)。「あたしの人生と一緒じゃない」とか言ってましたね。
磯崎:(シェリル・クロウ命を公言し、本人にも3度のプロポーズをして玉砕しているのが自慢の増子氏に向かって)シェリルはいい人だから、ルシンダみたいな姉御にはなれないんじゃないですか。
増子:そうかなぁ。
赤尾:うん。姉御肌じゃないよね。
増子:そうかなぁ。
磯崎:いい人っぽいもん。フレンズって、感じ。
増子:そうかなぁ(どうやら、シェリルには姉御肌であることを求めているらしい)。
赤尾:そういえば、シェリルってライアン(・アダムス)ともフレンズなんですよね。
増子:そうなの!?
赤尾:だって、前にライアンのHPに仲よさげなツー・ショット、載せてたよ。
増子:気に入らないなぁ(って言われても…)。

赤尾:さ、話を元に戻して。
ベン・クウェラー
ポリフォニック・スプリー
磯崎:次は、ポリポリ(註:正式にはポリフォニック・スプリー)ですね。裏でベン・クウェラーも演ってましたけど、ベンと言えば…。
増子:朝ご飯食べに行ったホテル近くのメキシカン・カフェで、会いましたよねぇ。
赤尾:会ったというか、私たちが食べ終わって出て来たら、外で順番待ちしてて。
磯崎:しかも私と赤尾さんは、ベンと一緒にいた美青年に目が釘付けで。
増子:ハンソンの真ん中の子に似てたね。
赤尾:テイラー君ですよ。似てた、似てた。写真、隠し撮っちゃったもんね。
磯崎:ベンを撮れよ、って感じですよね(指示したのは私だが、撮ったのはキミだ)。
赤尾:で、ポリポリのティムは、記者会見の前に会見場だったACLのテントでみつけたんですけど、最初はバンドとお揃いのローブ着たファンだと思ったんだすよね。ところがよく見たら本人で。話しかけておしゃべりしたんですけど、その時天気が今イチで小雨なんかもパラついてて。「天気がねぇ」って私が言ったら「僕たちが晴らしてあげるよ!」って自信満々。そしたら、本当にポリポリがステージ演ってるあたりから、晴れてきちゃった!
磯崎:私たちが記者会見場に着いたら赤尾さんが「ホラホラ、写真写真。コメントもくれるって」って、いきなりティムを連れて来て。
赤尾:勝手にセッティングしちゃった。
増子:しかもティム、いいヤツで、記者会見場がちょっとうるさかったから「ここじゃなくて、外の方が静かだよ」って小雨の降る中、外にまで出てくれてね(註:この時の模様はBAY FM『DIG THE ROCKS』でオン・エアされました)。
磯崎:ポリポリのステージは相変わらず人がいっぱいいましたね。で、フォト・ピットがないから写真もすごく撮影しにくかったんだけど、ふと見たらステージの脇にボブがいて! なんだか嬉しくなっちゃいましたよ(註:ボブの正体は前回の対談をご参照下さい)。
増子:俺なんか、ボブと写真撮っちゃったもん。
赤尾:あたしも!
磯崎:五十嵐さんが『DIG THE ROCKS』のゲストに出てくれた時も、「僕も本当にあれからボブのこと調べちゃって…」って言ってましたけど、裏流行りですよね。近い将来、ボブさんにはゆっくり話を聞いてみたいと思ってます。
増子:でも、やっぱり3日目が1番人が多かったよね(註:公式発表では、初日4万、2日目5万5千、最終日6万の、のべ15万5千人動員)。
ジャック・ジョンソン赤尾:ジャック・ジョンソン、すごい人でしたよねぇ。
磯崎:私、デビュー・アルバムから「買って」ますからね。そこからインターネットでビデオまで買って。
赤尾:私はあのビデオ持ってるわよ、とか、観客の小僧と闘ってたよね、イソちゃん。
磯崎:負けませんでしたよ! 肝心のライヴはすごく良かったんですけど…。これは日本公演観ても「?」が浮かんじゃったことで。本当はもっとリラックスして、チル・アウトして聴く音楽だと思うんですけど、異様な盛り上がりなんですよね、お客さんが。
増子:だから、日本に帰って来て、再度彼のステージに接して思ったことがあるんですけど。いつも洋楽のコンサートにいる観客じゃないんですよ、日本の観客は。それと同じことがアメリカでも起きているんじゃないかな、って。
赤尾:それは、どうですかね? 少なくとも日本よりは音楽を身近に感じているお客さんがアメリカにはいたように、私は思いましたけど。
増子:日本の場合は、音楽以外の付加価値部分ーー彼がサーファーであることねーーが極端だということは言えますよね。でも、アメリカにも似た部分はあると思うなぁ。でなきゃ、あんなに人が集まらないでしょ。
赤尾:アメリカで100万枚売ってたら、あれくらいの人は集まるんじゃないかな。しかもフェスだし。アメリカのお客さんは、一緒に歌ったりしながら音楽を楽しんでいたけど、私が行った東京のリキッドルームでのライヴは、ろくに音楽も聴かないで喋ってる人、すごく多かったですよ。通常の洋楽ライヴでは、ありえない。今、ここでジャック・ジョンソン観てる俺が好き、みたいな空気、なじめなかったなぁ。
磯崎:そういう異様な盛り上がりの中でも、彼はマイペースっていうのが、いいですよね。
増子:いずれにせよ、あのゆるさを、ゆるーく体験したいっていう人間にとっては違和感あったね。
赤尾:本来、あんなに売れるべきものじゃないんですよ、きっと。でも売れるべきものじゃないから売れちゃって、異様な盛り上がりを生んでしまった、みたいな。もちろん、私が彼の音楽好きなことに変わりはないですけどね。
磯崎:今後ずっと長くやっていって欲しいと思うからこそ、心配にもなりますよね。
赤尾:ファッションやカルチャーと音楽は密接な関係にあるし、そういった視点からも宣伝することは間違っていないけど、音楽という核の部分抜きに「流行りもの」に仕立て上げるのは勘弁して欲しいかな。すでに今、ジャックの音楽をちゃんと取り上げてる音楽雑誌がないというのも気になりますよ。
増子:断然売れてるのは、輸入盤なんだよね。
赤尾:そこですよ。ライナーも歌詞対訳もいらないんだもん(哀しむライナー執筆者)。
増子:だって、雑貨屋で売ってるんだよ。それがダメだとは言わないけどさ。
赤尾:でも、怒ってるでしょ。
増子:…ちょっとね(苦笑)。
赤尾:ジャックの後はベン・ハーパーだったのですが、かわいそうなおふたりは、私の道連れとしてR.E.M.体制の準備を整える為に、ウィーンを観ながらメイン・ステージで待機(笑)。
増子:はい。
kween赤尾:ベス・オートンまで諦めて。で、おふたりはウィーン、どうでしたか?
増子&磯崎:………(なぜ、無言)。
赤尾:今回は、かなりハード・ロッキンなセットでしたけど。私は、やっぱり変なオッサン達やなぁ、最高じゃん!って大喜びしてましたけど。
磯崎:喜んでいる赤尾さんを横目で見ながら…。
赤尾:寝てたよね、イソ!
磯崎:ちょっと疲れちゃって…。でもね、赤尾さんが好きなのは、すごく分かる。
増子:あのさ、赤尾美香論になっちゃうんだけどさ(註:論じるほどのもんじゃないと思いますが)、赤尾の根底にあるのはポップなんだよ。
磯崎:ポップなんだけど、パンクで、一筋縄ではいかないロック。
増子:ロックのポップなんだよ。ロック・スピリッツを持ったポップなんだよ。
赤尾:……(そうなんだ。そうかもしれない。でも、よくわかんない。まぁ、いいや)。
磯崎:でもウィーンこそ、あんなに人気があるのに日本じゃ知られてませんよね。
赤尾:すごくコアであることは、間違いないな。
Quebec磯崎:新作『ケベック』は、日本盤出るんですよね。
赤尾:出ますね。よろしくです!
増子:おもしろかったよ、ライヴ。うん。
磯崎:ああ、こういうバンドなんだ、って思いましたね。
赤尾:今回のラインナップの中ではちょっと異色に見えたかもしれないけど、彼らはルーツ・ミュージックの素養もすごく持ってて、でも表し方が普通というかマトモじゃないんですよね。この日のメイン・ステージはヨ・ラ・テンゴ、ウィーン、R.E.M. と続いてて、80年代後期のカレッジ・シーンから追ってきた者にとってはまさにヨダレモノな流れでした!では、いよいよ大トリとなりました、R.E.M.にまいりましょう。

r.e.m.増子:ライヴはこれが2度目だったんですけどね。俺はもう、本当にね、当たり前のことしか言えないんですけど…。
赤尾:当たり前じゃないこと、言ってくださーい!
増子:(笑)いやいや。世界で最も重要なロックン・ロール・バンドというコピーは間違いない、なと思いましたね。まさに、それぞれのメンバーがそれぞれの役割をきっちり果たし、これが俺たちのロックなんだっていうことを1番体現しているステージを見せてくれるバンドなんじゃないかな。
磯崎:う〜〜ん。とにかく、度肝を抜かれました。最初に出てきた時に。今までビデオでしかライヴは観たことなくて、生は今回が初めてだったんですけど、あのゾクゾク感というか、すごいですよね。
赤尾:今回、3曲分はフォト・ピットで写真撮ったじゃないですか。でも、マイケル(・スタイプ)と目が合ったら、ヘビに睨まれたカエル状態で、動けなくなるよね。かと言って、視線をそらすこともできない。こっちのカメラ見て欲しいんだけど、実際見られちゃうと「ヒーッ!」って。
増子&磯崎:うん、うん。
r.e.m.磯崎:ベテラン・バンドにある特有のオーラっていうのもあるんだけど、もっと鬼気迫るというか、とんがってるというか。そういうムードを未だに持っているんですよね、彼らは。
増子:『リヴィール』発売に合わせて、プロモで日本に来た時に取材させてもらったんだけど、マイケルって近い距離で合うと、あの目の力、眼力がすごいんですよ。面と向かってあの目で見られて何か言われた日には、もう本当に生きた気がしないっていうかね、それくらいの力を持った人だよ。でもさ、それは威圧感とは違うんだよね。
磯崎:絶対に違う。私も取材に立ち会ったんですけど、威圧感じゃないんです。語り口は穏やかだし。でも、オーラがすごい。それがステージとなったら、オーラは取材時の比じゃないですよね。これはなんか本当に、みんなに観てもらいたいバンドだと思いましたもん。
増子:赤尾さんも言ってたけど、ギターを持たずにステージに上がるフロントマンとしては、最高のフロントマンですね。今の時代の、ロック・アーティスト然としたロック・アーティストだと思う。確かにミック・ジャガーもすごいかもしれないし、そういう人はいっぱいいるけど、今の時代を代表するロック・ヴォーカリストだよ。
rediohead磯崎:日本って、レディオヘッドの人気高いし、トム・ヨークはカリスマ視されているけど、彼らを好きな人もちゃんとR.E.M.は聴いて、観るべきですよね。トム・ヨークがR.E.M.から受けた影響は大きいし、彼の原点みたいなものがR.E.M.にはあると思いますよ。

赤尾:では、最後に。この3日間は、おふたりにとってどんな3日間でしたか?
磯崎:アメリカでフェスを楽しんでのは初めてだったし、これまでのフェスに対する感じ方が覆されたってこともありますね。自分で積極的にバンドを観るという作業っていうのかな、活動っていうのかな、それに改めて刺激を受けた3日間でした。
増子:つくづく自分の見解の狭さを痛感した3日間でしたね。もちろんこれまで日本に来ていないアーティストのライヴを観て素晴らしさを感じたというのもありますけど、そうじゃない、たとえば130バンド出てるわけでしょ。そうすると、自分が知らない、日本で紹介されていないバンドやミュージシャンがまだまだこんなにたくさんいるんだってことを痛感し、彼らがそれぞれに素晴らしい音楽をやっていることを痛感し、かと言って今まで体験することなかったビッグ・ネームを再発見する機会でもありましたね。R.E.M.にしても他のアーティストにしても、テキサスという土地柄MCには興味深いものもあって(註:オースティンの前にヒューストンでライヴをやったR.E.M.は「(保守的な州とされている)テキサスで、(リベラルな)自分たちがあんなに歓迎されると思わなかった」といった類のMCを聞かせた)、それは日本公演では絶対に聞けない話だったりもするわけでね。とにかく、見解の狭さを感じた3日間だったな。また行きたいですね。
磯崎:赤尾さんは、どうですか?
赤尾:去年も今年もそうなんですけど、仕事を忘れ…まぁ始めから仕事だと思って行ってはいないんだけど、自分のペースで、自分が楽しみながらいられる場なんですよね。たとえば私はフジ・ロックも大好きだけど、あそこだとどうしても「誰々が観てください、って言ってたな」とか「これを今観ておかなくちゃ」みたいな気持ちを捨てきれないんですよ。それは当然なんだけど。でもオースティンでは、いち音楽ファンになってわがままにも貪欲にも過ごせるんですよね。それで、長年観たくても観ることができなかったライヴを、年にいくつかずつでも観ることができて、しかもそれが予想以上に良かったりすると「あぁ、私は間違っていなかったんだ」って安心するの。帰国後の仕事がんばろーって気持ちにもつながるし。だから、そんな興奮とか楽しかった気持ちを、こうして伝えられる場があるってことも、すごくありがたいですね。感謝してます!


〜いかがだったでしょうか?フェス最終日の報告でした。
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